解説
2003年9月に開催されたフランクフルトショーで、フォルクスワーゲンの主力モデルであるゴルフのニューモデルが発表された。初代から数えて5世代目となるゴルフが属するのは欧州Cセグメントと呼ばれる激戦区。オペル「アストラ」、フォード「フォーカス」、ルノー「メガーヌ」など、さまざまなメーカーがこのカテゴリに参入している。ボディサイズは先代からさらに大型化され、その恩恵で室内居住空間が拡大され、細部の質感も大幅に高められた。
デビュー当初に用意されたボディタイプは3ドアと5ドアのハッチバック。先代に存在した「ヴァリアント」と呼ばれるステーションワゴンは当初用意されず、旧型モデルが併売されていた。しかし、デビュー翌年には「ゴルフプラス」と呼ばれる5ドアの派生モデルが登場。これは全長・全幅のサイズをそのままに、全高のみを95mm拡大して室内空間をさらに拡大し、エクステリアのデザインもゴルフと差別化したモデルである。さらに2006年9月にはゴルフプラスをベースに最低地上高を高めてSUVライクに仕立てたクロスゴルフ、2007年3月には待望のステーションワゴン、ゴルフヴァリアントが設定された。これらゴルフファミリーのプラットフォームは、先に登場したアウディ「A3」と共通の新開発シャシーを採用。先代に比べてボディ剛性が大幅に高められ、安全性や走りの性能に大きく寄与している。
デビュー当初に搭載されたエンジンはガソリンが1.4L、1.6L、2.0Lの3機種とディーゼルが1.9L、2.0Lの2機種。1.6Lと2.0Lには直噴技術「FSI」が搭載されたのも新機軸となる。シャシーは、プラットフォームを一新したことにより、サスペンション形式を変更。フロントは先代と同様にマクファーソンストラット式が採用されるが、リヤは初代から使い続けてきたトレーリングアームを捨て去り、マルチリンク式となったことが大きなトピック。これにより走行性能が大きく高められている。
そんな5代目ゴルフに、高性能スポーツモデル「GTI」が追加設定されたのはデビューから1年後のこと。2004年9月のパリサロンにて正式発表された「GTI」の最大の特徴は、専用のフロントデザインを採用したことだ。「GTI」のエクステリアの差別化は、歴代ゴルフのなかでも初めてのことで、赤い縁取りのハニカムメッシュグリル、大型開口部を備えたバンパーグリルによって、スポーツモデルらしい精悍な顔つきとなった。さらにフォグランプやルーフスポイラーも標準装備。ボディタイプは3ドアと5ドアの両方が用意される。
エンジンは最高出力200psを発生する2.0L 直列4気筒ターボ「2.0TFSI」を搭載。エンジンが直噴化され、圧縮比をターボとしては高めの10.3に設定。低回転域から十分なトルクを発生させて使いやすいトルク特性としているのが特徴だ。これに組み合わされるのが6速MTおよびDSGと呼ばれる2ペダルMT。このDSGでは、2軸のシャフトと2組のクラッチを持つ革新的なトランスミッションで、先代ゴルフのハイパフォーマンスモデル「R32」に採用されていたもの。足まわりは25mmローダウンした強化スプリング、20%剛性をアップしたスタビライザーなどを採用し、走りの性能を高めている。
ホットハッチの祖である初代ゴルフ「GTI」。モデルチェンジを重ねるごとに存在感は薄れていたが、この5代目にして走りを楽しめるピュアなスポーツモデルとしてのポジショニングを再び明確にしている。アストラ「OPC」、フォーカス「ST」、そしてメガーヌ「ルノースポール」など強力なライバルがひしめく高性能Cセグメントスポーツのなかでも、存在感は十分に大きい。単純なスポーツ走行のための性能だけではなく、クルマ全体の質感を高い次元で両立した現代のホットハッチと言えるだろう。
主要諸元 " MY05 GOLF GTI (3Door) "参照:ドイツ・オフィシャルサイト
寸法・重量 | エンジン・トランスミッション | ||
車格 | Cセグメント | 型式 | - |
乗車定員 | 5名 | 種類 | 2.0L 直4 DOHC 16V ターボ |
全長×全幅×全高 | 4216×1759×1466 mm | 気筒内径×行程 | 82.5×92.8 mm |
ホイールベース | 2578 mm | 総排気量 | 1984 cc |
トレッド前/後 | 1539/1528 mm | 圧縮比 | 10.3 |
最低地上高 | - | 最高出力 | 147kW[200ps]/5100rpm |
重量 | 6MT:1328-1428 kg 6SAT:1347-1447 kg | 最大トルク | 280Nm[28.6kgm]/1800rpm |
ステアリング形式 | ラック&ピニオン式 パワーステアリング | 燃料供給装置 | 筒内直接噴射式 |
サスペンション前 | マクファーソンストラット コイルスプリング | 燃料タンク容量 | 55 L 無鉛プレミアムガソリン |
サスペンション後 | 4リンク コイルスプリング | トランスミッション | 6MT/6SAT(DSG) |
ブレーキ前 | ベンチレーテッドディスク | 駆動方式 | FF |
ブレーキ後 | ディスク | 動力性能 | |
タイヤ前 | 225/45R17 | 最高速度 | 6MT:235km/h 6SAT:233km/h |
タイヤ後 | 225/45R17 | 0-100km/h加速 | 6MT:7.2秒 6SAT:6.9秒 |
走行安定装置 | ABS/ASR/ESP |
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