解説
1989年、トヨタの高級ブランドとして北米で展開されたレクサス。そんなレクサスブランドの頂点に位置するのがLSシリーズである。これは同年10月からセルシオの名称で日本のトヨタブランドから販売され、3世代にわたりトヨタのフラッグシップの座に君臨していた。しかし2005年8月に遅ればせながら日本国内にもレクサスブランドが導入され、2006年9月、セルシオ改めレクサス LSとして販売がスタートしたのだった。ちなみにワールドプレミアの場となったのは2006年1月のデトロイトショー。ライバルとなるのは、メルセデス・ベンツ Sクラス、BMW 7シリーズ、アウディ A8などのプレステージサルーンである。
ほかのモデルと同様、LSシリーズもブランド理念である「高級の本質」を追求し、エクステリアは、2005年東京モーターショーで出品されたLF-Shのデザインををほぼ踏襲。ボディサイズは従来のセルシオからわずかに拡大された。エクステリア同様、インテリアでも高い品質感を誇り、収納蓋の開閉スピードにまでもこだわりを見せている。シートは、全車に本革が採用され、そのなかでも「Iパッケージ」には高価なセミアニリン本革が奢られている。バリエーションは、デビュー当初は「LS460」のみとなり、装備の差によって「標準車」、スポーティな「version S」、豪華な「version U」の3バリエーションが用意されたが、2007年5月にはシリーズの頂点に立つ「LS600h」と、全長およびホイールベースをそれぞれ120mm延長して後席の居住性を高めた「LS600hL」が追加された。この新グレードには、世界初のLED光源のプロジェクターヘッドランプ(ロービーム)が専用装備されたのが大きな話題となった。また2008年8月には一部改良が実施され、これと同時に「LS460」のロングホイールベース仕様とAWDモデルが加わっている。
エンジン、プラットフォーム、サスペンションなどの基本コンポーネンツは一新され、すべて新開発のものが用いられている。「LS460」のエンジンは新開発となる4.6L V8DOHC(1UR-FSE)を搭載。このエンジンの大きな特徴として、吸気側に電気モーターを組み込んだ電動連続可変バルブタイミング機構(VVT-iE)を世界で初めて採用した点が挙げられる。燃料噴射装置には、すでに「IS350」や「GS350」で採用済みの筒内直接噴射とポート噴射を組み合わせた「D-4S」を用い、最高出力は385ps、最大トルクは51.0kgmを発生する。そしてトランスミッションには、世界初となる8速ATが組み合わされるのも注目すべきところ。これによりスムーズな変速を実現し、0-100km/h加速は5.7秒という高い性能を誇る。大排気量エンジンを搭載しながらも排出ガスレベルは優秀であり、全車が「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」を達成している。
そしてシリーズの頂点に位置づけられるのが、2007年5月に追加された「LS600h」と「LS600hL」。これには新開発の5.0L V型8気筒エンジン(2UR-FSE)に224psを発生する高出力モーターとニッケル水素電池を組み合わせたハイブリッドシステムが搭載される。システム全体の最高出力は445psに達し、6.0Lクラスの高い動力性能と12.2km/Lの低燃費を実現。パワーとエコロジーを高い次元で両立した究極のモデルといえる。トランスミッションを兼ねるモーターには2段変速式リダクション機構が与えられており、パワフルな加速と快適な高速クルージングを実現。そしてこれに組み合わされる新開発フルタイムAWDにより、高い走行安定性が確保されている。
サスペンションも新開発となり、前後ともマルチリンク式を採用。これに電子制御式エアスプリングとモノチューブショックアブソーバーが組み合わされる。ステアリングには、ギヤ比可変ステアリング(VGRS)が全車に標準装備されるのが新機軸。ブレーキは、前後ともベンチレーティドディスク(前334mm/後315mm)を採用。そのなかでも「version S」にはより大径なディスク(前357mm/後335mm)、19インチタイヤ(標準は18インチ)、そして専用チューニングサスペンションが奢られ、より高い走行性能を実現している。走行安定装置では、IS、GSですでに導入されている「VDIM」を標準装備。これは従来の姿勢制御装置(ABS/TRC/VSC)にステアリング操作を加え、統合制御したものである。
新型LSでは最先端テクノロジーが充実しているが、なかでも世界トップレベルのアクティブセーフティを実現しているのがポイント。従来の「プリクラッシュセーフティシステム」に、前方の歩行者検知と操舵回避支援、後方車両への対応機能を世界で初めて導入したのが特筆すべき点であろう。ミリ波レーダーと新開発ステレオカメラを組み合わせて歩行者を検知し、衝突の危険性が高いと判断された場合は、ステアリングギア比、ショックアブソーバーの減衰力、ブレーキ油圧などが最適化され衝突回避を促す。逆に追突の危険性を感知するとハザードランプを点灯させて後方車両に注意を促し、その後はヘッドレストが前方に移動してむち打ち障害のリスクを軽減させている。
2009年10月にはマイナーチェンジを受けてさらに進化。エクステリアは、フロントグリル、前後バンパー、ヘッドランプ&リヤコンビランプ、アルミホイール形状の変更やサイドターンランプ付きドアミラーの採用など、一層洗練されたスタイリングとなった。また「LS460」と「LS600hL」のデザインもより差別化され、ひと目でグレードの判別ができるようになっている。インテリアは、シートやドアトリム、ステッチのカラーや素材を自在に選択し、3万とおり以上のコーディネートが可能なカスタマイズプログラム「L-Select」が一部グレードに導入されたのも新しい。
また、このマイナーチェンジではバリエーションの拡大が図られたのもトピック。「LS460」にはスポーティな装備を充実させた「version SZ」、ロングホイールベース仕様にはリヤシートエンターテイメントシステムを標準装備するなど後席の快適性を重視した「version UZ」が新たに設定された。なかでも「version SZ」は、専用フロントグリル、前後アンダースポイラー、サイドロッカーモールなど、走りを意識したディテールが光る。さらにブラック仕立てのインテリアにスポーツシートが組み合わされるほか、BBS社製19インチ鍛造アルミホイール、ブレンボ社製の専用ブレーキ、チューニングサスペンション、そしてパドルシフトで変速可能な専用チューニング・トランスミッションなど、積極的に走りを楽しみたい人に訴求したモデルとなっている。
主要諸元 " 2006 LS460 "
寸法・重量 | エンジン・トランスミッション | ||
車格 | Lセグメント | 型式 | 1UR-FSE |
乗車定員 | 5名 | 種類 | 4.6L V8 DOHC 32V |
全長×全幅×全高 | 5030×1875×1465 mm | 気筒内径×行程 | 94.0×83.0 mm |
ホイールベース | 2970 mm | 総排気量 | 4608 cc |
トレッド前/後 | 1615/1620 mm | 圧縮比 | 11.8 |
最低地上高 | 145 mm | 最高出力 | 283kW[385ps]/6400rpm |
重量 | 1940 kg | 最大トルク | 500Nm[51.0kgm]/4100rpm |
ステアリング形式 | ラック&ピニオン式 電動パワーステアリング | 燃料供給装置 | 筒内直接+ポート燃料噴射装置 (D-4S) |
サスペンション前 | マルチリンク エアスプリング | 燃料タンク容量 | 84 L 無鉛プレミアムガソリン |
サスペンション後 | マルチリンク エアスプリング | トランスミッション | 8AT |
ブレーキ前 | ベンチレーティドディスク | 駆動方式 | FR |
ブレーキ後 | ベンチレーティドディスク | その他 | |
タイヤ前 | 235/50R18 | 生産拠点 | 愛知県 田原工場 |
タイヤ後 | 235/50R18 | 価格帯(登場時) | 770万円 〜 965万円 |
走行安定装置 | ABS/TRC/VSC/VDIM |