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2000GT
2000GT
解説
2008年3月のジュネーブショーで、トヨタは1997年に発売したプリウス以来とも言える革新的なニューモデルを発表した。それは、かつてダイムラー・クライスラー社が送り出したスマート クーペのコンセプトをトヨタ流に解釈しなおした最小サイズのシティコミューターで、iQと名付けられた。同年10月のパリサロンではこのiQが正式発表され、11月から日本に、翌年初旬からは欧州市場にも投入。iQはそれまでトヨタ最小サイズだったパッソよりも小さいが、単なる安価なコンパクトカーという位置づけではなく、トヨタ自身が「マイクロプレミアム」と謳い、コンパクトカーにありがちなネガティブなイメージを払拭したプレミアムカーとして誕生したモデルなのである。
そのボディサイズは、全長2985mm、全幅1680mm、全高1500mm、ホイールベース2000mmと非常にコンパクトなもの。軽自動車より短い全長ながらも、全幅と全高の値を余裕たっぷりに取ることで、自動車としてはあまり例のない特異なディメンジョンを持つのが特徴。エクステリアには、自然界の造形美を活かしたラインや曲面が用いられ、大径タイヤ(15インチ)の四隅配置をアピールした力強いホイールアーチを採用するなど、ボディの小ささを感じさせない存在感のあるアピアランスを持っている。また、世界初となるハイ・ロー一体切替のプロジェクター式ヘッドランプや、LED式リヤコンビランプ、サイドターンランプ付きドアミラーを標準採用するなど、見た目にも上級モデル並みの質感を誇る。
インテリアは、海洋生物のマンタをモチーフとする曲線的なセンタークラスターに直線的なデザインのインパネが組み合わされ、インパクトのあるエクステリアにも負けない斬新なイメージを演出。またシート、ステアリング、シフトノブに本革を採用した「レザーパッケージ」が設定される点も、従来までのコンパクトカーの概念を覆している。安全面では、世界初のリヤウインドウカーテンシールドエアバッグを含む9エアバッグ、ステアリング協調車両安定性制御システム(S-VSC)を全車に標準装備。そして、わずか2985mmの全長でありながらも、スマートのような2シーターではなく、4シーターとされた点もiQの大きなトピックと言える。
この革新的なパッケージングは、さまざまな工夫によって実現されている。まず、デファレンシャルギヤを反転させて出力軸を前方に配置することでタイヤを前方に出し、フロントオーバーハングを短縮。これにあわせてステアリングギヤボックスを上方配置し、エンジンルームのコンパクト化を実現したこと。燃料タンクをフラット化して床下搭載し、リヤオーバーハングを短縮したこと。シートを薄型化し、後部座席のスペースを拡大したこと。本来助手席側にあるエアコンを小型化してインパネ中央部に納め、さらにこのスペースを運転席側より前方に出して左右非対称インパネを採用し、助手席足元スペースを拡大したこと。これらの細部にわたるパッケージングの追求により、大人3人乗車と子供1人または荷物の積載が可能となった。リヤシートは5:5分割可倒式とされ、スーツケースなどの積載が可能なほか、リヤシート下にさらなる収納スペースも設定されている。
完全に新開発となるiQのシャシーに搭載されるパワーユニットは、パッソに搭載されている1.0L 直列4気筒(1KR-FE)。iQのコンパクトなエンジンルームに搭載されるにあたり吸気系レイアウトなどが見直され、最高出力は68psを発生。これに組み合わされるのはCVTで、JC08モード燃費で21.0km/Lという優れた燃費性能を達成している。一方、電動式パワーステアリングは新開発され、スムーズなステアリングフィールを実現。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リヤがトーションビ−ムと、コンパクトカーのスタンダードとも言えるレイアウトを採り、最小回転半径は世界最小レベルの3.9mを達成している。
デビュー翌年となる2009年8月には一部改良を実施。この改良では運転席にシート上下アジャスター(レザーパッケージのみ)やドアアームレストにポケットが追加されるなど、使い勝手を一段と向上させた。そしてなんと言っても新開発1.3Lエンジン(1NR-FE)が追加されたことが、注目すべきポイント。このエンジンは国内では初設定となる新規ユニットで、吸気・排気バルブタイミングを最適にコントロールする「デュアルVVT-i」を採用。最高出力94psを発生しながら、JC08モード走行燃費で20.8km/Lを実現した。これと同時に、GAZOO Racingがチューニングを施したスポーツモデル「GAZOO Racing tuned by MN」がモデリスタから登場。これはリヤディスクブレーキや専用チューニングサスペンションなどで足まわりが強化され、6速MTを組み合わせたホットバージョンで、100台限定で発売された。
主要諸元 " 2008y iQ 100G LEATHER PACKAGE "
寸法・重量 | エンジン・トランスミッション | ||
車格 | Aセグメント | 型式 | 1KR-FE |
乗車定員 | 4名 | 種類 | 1.0L 直3 DOHC 12V |
全長×全幅×全高 | 2985×1680×1500 mm | 気筒内径×行程 | 71.0×83.9 mm |
ホイールベース | 2000 mm | 総排気量 | 996 cc |
トレッド前/後 | 1475/1460 mm | 圧縮比 | 10.5 |
最低地上高 | 135 mm | 最高出力 | 50kW[68ps]/6000rpm |
重量 | 890 kg | 最大トルク | 90Nm[9.2kgm]/4800rpm |
ステアリング形式 | ラック&ピニオン式 電動パワーステアリング | 燃料供給装置 | 電子制御燃料噴射式(EFI) |
サスペンション前 | マクファーソンストラット コイルスプリング | 燃料タンク容量 | 32 L 無鉛レギュラーガソリン |
サスペンション後 | トーションビーム コイルスプリング | トランスミッション | CVT(Super CVT-i) |
ブレーキ前 | ベンチレーテッドディスク | 駆動方式 | FF |
ブレーキ後 | リーディングトレーリング | その他 | |
タイヤ前 | 175/65R15 | 生産拠点 | 愛知県 高岡工場(本社) |
タイヤ後 | 175/65R15 | 価格帯(登場時) | 140万円〜160万円 |
走行安定装置 | ABS/S-VSC |