解説
ジャガーのトップレンジに位置づけられるXJシリーズが最初にデビューしたのは1968年のこと。その後、幾度のモデルチェンジを重ね、2002年9月のパリサロンで、3世代目となるXJシリーズが発表された。コードネーム「X350」と呼ばれる新型XJシリーズの特徴は、なんといっても量産モデルでは初となるアルミ製のフルモノコックボディが採用されたことである。アルミニウムのエキスパートであるアルカン社の協力のもと開発されたこのアルミモノコックボディは、リベット接合とエポキシ樹脂接着剤を併用して組み上げられている。スチールボディの先代(X308)と比べておよそ40%もの軽量化を実現し、同時にボディ剛性を60%も高めている。
ジャガーのチーフデザイナー、イアン・カラム氏が手がけたエクステリアは、先代同様ひと目でジャガーと分かるデザインだが、全高はおよそ90mm、ホイールベースは165mm程度拡大しているため、地を這うような低いプロポーションは失われた。しかしその恩恵で、室内空間が先代比で30%〜40%も向上、とくにそれまでライバルと較べると明確なウイークポイントであった後部座席の居住性が大幅に改善され、快適に座ることが可能となった。同時にトランクルームも拡大されており、ゴルフバッグを4セット収納することができる。
インテリアは、マイナーチェンジしたSタイプやXタイプと共通のデザインが採用され、シートやトリムにはバーウォールナットやレザーがふんだんに使われている。装備面では、新開発となる2段式フロント&サイドエアバッグ、フロント&リヤカーテンエアバッグに加え、乗員の大きさや位置などを感知し、効果的にエアバッグをコントロールするA.R.T.S. (Advanced Restraint Technology System)を採用するのも特徴。
デビュー当初のバリエーションは、4.2Lまたは3.5LのV8DOHC(AJ-V8)を搭載する「XJ8」、3.0LのV6DOHC(AJ-V6)を搭載する「XJ6」、そして4.2LのV8DOHCにスーパーチャージャーを組み合わせた「XJR」と「スーパーV8」が設定された。6気筒エンジンを積む「XJ6」は、1998年に生産を終えた先代中期型(X300)以来久々に設定されたもので、アルミモノコックボディと相まって、ライバルと較べると大幅に軽く仕上がっている。トランスミッションは、全車に新設計のZF社製6速ATが組み合わされる。
サスペンションは、前後ともダブルウィッシュボーン式が採用され、全車にエアスプリングが組み合わされる。さらに電子制御可変ダンピング機構CATS(Computer Active Technology Suspension)が全車に標準装備され、ハンドリングと走行安定性、乗り心地を実現している。
このXJシリーズのなかで、メルセデス・ベンツの「AMG」、BMWの「M」、アウディの「S/RS」に該当するハイパフォーマンスモデルが「R」、すなわち「XJR」である。エクステリアは、「R」のお約束であるメッシュタイプのフロントグリルの採用により、ほかのモデルと差別化。インテリアは、「R」の刻印が施された専用レザーシートやシフトノブが奢られる。搭載するエンジンには、前述のとおり4.2L V8DOHCにイートン社製のスーパーチャージャーを組み合わせ、最高出力は406ps、最大トルクは553Nmを発生する。1665kgという軽量なボディをもつ「R」は、0-100km加速が5.3秒、最高速度が250km/hという凄まじいパフォーマンスを発揮。当然足まわりも強化され、スポーツエアサスペンション、「R」の刻印が入ったブレンボ社製4ピストンキャリパーが奢られ、スポーツセダンに相応しいハンドリングを誇る。さらにタイヤは19インチが標準装着されるが、オプション設定として20インチサイズも存在する。
2007年モデル(2006年8月)では一部改良が行われ、XJ全シリーズにメッシュタイプのフロントグリルが与えられた。これゆえ、スタンダードモデルと「R」の区別がつき難くなった。また、スタンダードモデルのホイールが19インチに拡大、「R」では新デザイン(Cremona)の20インチアルミが標準採用された。そして2008年モデルではエクステリアの造形が大幅に変更され、よりモダンなスタイルになったが、これがXJRのラストイヤーとなる。2009年には4代目の新型XJが登場したが、1988年から続いた伝統の「R」モデルは設定されなかった。
主要諸元 " MY04 XJR "
寸法・重量 | エンジン・トランスミッション | ||
車格 | Fセグメント | 型式 | |
乗車定員 | 5名 | 種類 | 4.2L V8 DOHC 32V S/C |
全長×全幅×全高 | 5090×1860×1448 mm | 気筒内径×行程 | 86.0×90.3 mm |
ホイールベース | 3034 mm | 総排気量 | 4196 cc |
トレッド前/後 | 1556/1546 mm | 圧縮比 | 9.1 |
最低地上高 | - | 最高出力 | 298kW[406ps]/6100rpm |
重量 | 1665 kg | 最大トルク | 553Nm[56.4kgm]/3500rpm |
ステアリング形式 | ラック&ピニオン式 パワーステアリング | 燃料供給装置 | 電子制御燃料噴射式 |
サスペンション前 | ダブルウィッシュボーン エアスプリング | 燃料タンク容量 | 85 L(+7.5 L) 無鉛プレミアム |
サスペンション後 | ダブルウィッシュボーン エアスプリング | トランスミッション | 6AT |
ブレーキ前 | ベンチレーテッドディスク | 駆動方式 | FR |
ブレーキ後 | ベンチレーテッドディスク | 動力性能 | |
タイヤ前 | 255/40ZR19 (O : 255/35ZR20) | 最高速度 | 250km/h(リミッター) |
タイヤ後 | 255/40ZR19 (O : 255/35ZR20) | 0-100km/h加速 | 5.3秒 |
走行安定装置 | ABS/TCS/DSC |
関連リンク